柏原高校理科部が、水分れフィールドミュージアム(氷上町石生)の企画展「標本大集合いきものの“ナゼ”にせまる」で展示するシダ植物の標本作りに取り組んでいる。現役の生徒が作った標本と、植物学者で人と自然の博物館名誉館長の岩槻邦男さん(89)ら部の大先輩が70年以上前に作った植物標本のデジタル版が並べて展示される。
シダ植物に詳しい同博物館の鈴木武研究員の指導で8月28日、学校近くの住宅地や山で採集した。岩槻さんが理科部の前身、生物班の現役部員の頃に採取した場所で、標本と同じシダが今も残っているか、また、その頃になかったシダが流入しているかなどを確かめた。
鈴木さんは、住宅地の側溝に生えていた「イヌカタヒバ」を採集。「国内外来種で、岩槻さんの学生時代にはなかったかもしれない。また、今あっても20年後にあるかは分からない。標本は、少なくともこの時点でここにあったことの証明になる」と説明。標本にできない場合は、写真を撮影するなど記録を残すことの重要性を説いた。
また、▽胞子が付いているものと付いていないものをセットにする▽全体の長さが分かるように地上部全体を採集する―などとこつを説明。奥村川沿いの山に入り、オオバノイノモトソウ、ヤブソテツ、オニカナワラビ、タチシノブなどを次々と採取。生徒たちは専門家の同定に感心していた。
学校に戻り、標本作りを実習。台紙に貼る前作業の脱水を体験。シダを新聞紙に挟み、その新聞紙の上下に別の新聞紙を置いて吸水させ、十分に重石をして、採集日から数日は吸水用紙を小まめに交換することを学んだ。
石田大翔部長(2年、山南中出身)は、「スマホやゲームでもいろんな人とつながれるけれど、現場で生の経験を積むことが大事だと分かった。鈴木さんと同じ物を見ても、知識を持っているのといないのとでは見え方、感じ方が違うんだとも思った」と言い、三井一葉さん(2年、氷上中出身)も、「シダ植物は全部似ていて、同じように見ていたけれど、1カ所に数種類あり、説明してもらって違いに気づけた」と話していた。
今春、岩槻さんが同校標本室を訪れ、1950年代に自身が作った標本や、明治2年(1869)の古い物など71点を選び、同博物館でデジタルデータ化した。
企画展は、丹波市や氷上回廊に関する標本を集め、自然、歴史、文化を解説し、地域資源を次世代に引き継ぐことの大切さを伝える展示。11月18日から。