文部科学省の「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)」の指定を受けた全国37校の生徒が日頃取り組んでいる、「グローバルな視点をもって地域課題の解決に挑む提言や実践」を日本語や英語で発表する「Glocal High School Meetings 2022(全国高等学校グローカル探究オンライン発表会)」で、柏原高校2年1組の6人で構成した「まち歩き探究班」が、日本語発表部門でトップ5校に贈られた金賞の中でも最上位の「文部科学省初等中等教育局長賞」を獲得した。1月29日、エントリーした30校をオンラインで結び、各部門の金賞受賞校が発表した。
相互交流深めるまち歩き」提案
頂点に輝いた柏原高校の6人は、足立風薫さん(春日中出身)、安藤美凪さん(柏原中出身)、難波侑里さん(山南中出身)、足立悠成君(青垣中出身)、高嶋深央さん(市島中出身)、待場渚羽さん(山南中出身)で、探究テーマは「長崎さるく的まち歩きと学校での共通体験の共有化の実践―丹波市在住外国人との信頼関係構築のために」。市内在住外国人の人口推移を調べたり、外国人と高校生の交流事業の開発に取り組んできたことや、開発した事業を実施したりした成果と課題を発表した。
6人の発表によると、昨年11月末時点で市内に暮らす外国人は930人で、市人口全体の約1.5%(全国平均2.25%)。200人に3人は外国人で、増加傾向にある。ベトナム人が335人(35%)と最も多く、次いで中国人の273人(28%)。ベトナム人が多いのは、工場勤務の技能実習生の急増が要因とした。
工場勤務は日本語でのコミュニケーションが十分でなくても可能。しかし、日本人との交流が勤務先だけに限定されてしまっており、「近所に外国人が住んでいるが、あいさつを交わす程度で、どんな生活をしているのか分からない。もっと交流し、同じ地域住民として生活したい」との思いからテーマに設定した。
同校インターアクト部が実施した聞き取り調査から、在住外国人が「もっと日本人と親しくなりたい」「積極的に地域活動に参加している」ことなどが分かった。
そこで、互いの関係を深める策として、休日に出歩くことが少ない在住外国人に丹波市の見どころを知ってもらおうと、「まち歩き」を提案。散策を通して対話し、そこから信頼関係が生まれると考えた。
日本の文化面白い共通体験語り合う
まち歩きの交流事業開発に向け、先行研究として、「〈対話の場〉としてのまち歩き観光:『長崎さるく』10年間を探る」(金明柱2018)などの論文を参考にした。
事業内容を決める上で、丹波柏原ふるさとガイドクラブにアドバイスを求め、「外国人との共通の話題を通じて、共感の感情が生まれた。そのときにガイドとゲストの関係を越えられた」との回答を得られたことから、外国人との共通の話題を意識してまち歩きの内容を組み立てた。
昨年12月、20~30代のベトナム人技能実習生の男女5人を参加者に、まち歩き事業を実施。柏原八幡宮、木の根橋、織田家柏原藩陣屋跡などをガイドし、同校の教室で、互いの学校生活の話や将来の夢を語り合った。ベトナム人からは「日本特有の文化、おみくじが面白かった」「勤務先以外の日本人と親しく話したのは初めて」「もっと日本語を勉強して日本人と交流したくなった」との感想が聞かれた。
発表の中で生徒たちは、「ベトナム人は非常にフレンドリー」「互いが持つ学校生活という共通の体験を話したことで信頼関係が生まれた」などと手応えを示す一方で、「応募が少なかったので、呼び掛け方法を工夫する必要がある」「質問に答えることができない場面が多かったので、自分たちがもっと地域や日本の歴史・文化への理解を深めなければならない」「案内する場所は、外国人が参加型で学べる場所にする」「互いに名前が覚えられないので名札を用意する」などの課題を報告し、結んだ。