2021年3月03日(水) | by 柏陵ウェブ編集部 コメントする

 柏原高校「知の探究コース」2年の西田添恵実さん(市島中出身)が、パン製造に携わる障がいのある男性が自己肯定感を獲得していく成長の軌跡をまとめ、このほどオンラインで行われた「甲南大学リサーチフェスタ」で発表した資料が、優れた構成、配置、色使いで作成されたとしてロジカルデザイン賞を受賞した。タイトルは「障がい者の自己肯定感を促す環境づくり・障がい者能力の自己開発能力についてのエスノグラフィー研究」。地域の障がい者施設で昨年9月から研究したことを、表や写真を多用して発表した。
 障がい者と健常者の信頼関係に興味を持っていた西田さんは、障害者就労継続支援B型施設「ら・ぱん工房 来古里」(市島町上牧)を運営する髙見忠寿さん・真生さん夫婦を訪ねた。そこで、はつらつと働く利用者で発達障がいのある西垣祥平さん(33)の、5年前の入所当初から現在までの写真を見せてもらい、年を追うごとに西垣さんの表情が豊かになっていく様子を目にした。 髙見夫妻の「障がい者の自己肯定感を促すサポートを心掛けている」との言葉に西田さんは、西垣さんと 髙 見夫妻との関係性に着目した。
 来古里が他施設と比べて送迎や工賃などの待遇面で突出しているわけではないのに、西垣さんが楽しく働けているのは、「施設の物理的要因ではない別の要因がある」と考え、対象者をインタビューやフィールドワークを用いて観察し、データを集めて要因を探る「エスノグラフィー」という方法で調べることにした。
 西垣さんの中学1年から現在までを1年ごとに区切り、西垣さんにそれぞれの年で家族や学校、知人、友人との思い出を振り返ってもらい、幸せ度を10段階評価で表してもらうとともに、最もうれしかった出来事を書き出してもらった。
 調査の結果、施設で働き始めるまでの幸せ度は3―7で、特に19―27歳の期間、うれしかった出来事の記述欄はほぼ空欄だった。
 一方、28歳で入所後は幸せ度が8―10にアップし、他人との関わりが増え、記述量も飛躍的に増えた。写真の表情やしぐさを読み取ってみると、幸せ度が高まっていくにつれ、口を真一文字に結んでいた笑顔が、歯を見せた柔和な笑顔に変化し、ぎこちないピースサインも自然な形になっていることが分かった。
 西田さんは、「 髙見夫妻は、利用者の長所を生かした利用者中心の職場づくりに努め、西垣さんのことを理解して良き話し相手となっている。西垣さんも2人を信頼しており、施設が疑似家族的存在になっている」とし、「人権の普遍的価値へのアプローチだった。健常者も障がい者も互いに学び合いができる関係性なのに、区別するのはおかしなことだと改めて認識した」と結んでいる。

 【 甲南大学リサーチフェスタ 】 文系、理系を問わず、高校生、大学生、大学院生が共にポスター形式で、研究や活動について発表する同大独自のイベント。今回で4回目の開催となり、これまでに2300人以上が参加している。今年度は新型コロナウイルスの影響でオンライン開催となった。

(丹波新聞)

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