柏原高校2年1組(35人)の授業「探究Ⅱ」で、「環境」をテーマに学びを進めている生徒4人が1日、同校に大阪商業大学の原田禎夫准教授(45)を迎え、「プラスチックごみ問題をめぐる事情について」と題した講話を聞いた。原田准教授は、海洋プラスチックを専門に研究し、保津川の美化活動や、亀岡市の脱レジ袋の取り組みにも尽力している。生徒たちは、世界における日本のプラごみの排出量の多さに目を丸くし、さまざまなデータを織り交ぜながら海洋ごみ問題に警鐘を鳴らす原田准教授の話に耳を傾け、今後の活動の方向性やヒントを探った。講話の要旨は次の通り。
出発点すぐそこ
大阪湾河口でプラスチックごみを調査すると人工芝の破片が一番多かった。これらプラスチックごみが海の生きものに深刻な影響を及ぼし始めている。プラスチックごみは波や紫外線などにより粉砕され、やがてマイクロプラスチック(5㍉以下のプラスチック)と呼ぶ粒子となる。それが世界中の海中や海底に存在する。東京湾のイワシの7割、琵琶湖の魚の4割、世界の食塩のほぼ全て、水道水の8割からプラスチックが検出されている。
海を漂うプラごみの約80%が陸から川を通じて流れ出たもの。海ごみの出発点は皆さんのすぐそこにある。
4カ月間牢獄へ
日本では今年7月1日からレジ袋が有料化されたが、亀岡市は来年1月1日からレジ袋の提供禁止を決めた。驚かれるかもしれないが、世界ではこれが当たり前。イタリア、フランスなどではレジ袋禁止。ニュージーランドではレジ袋を店が提供すると罰金70万円。途上国はごみの収集・処理システムが整っておらず、より深刻なので、先進国より先に規制したいきさつがある。ケニアの場合、レジ袋を使ったら400万円の罰金もしくは4カ月間牢獄に入ることになる。
ごみ与える親鳥
海ごみによって、海鳥は深刻な影響を受けている。ミッドウェーで繁殖するコアホウドリがいる。親鳥は海で魚やイカなどを取り、ヒナの餌としてこれらを吐き戻して口移しで与える。親鳥が餌と間違ってペンのキャップやおもちゃのブロック、歯ブラシ、洗濯ばさみなどをヒナに与えてしまう。それらは消化されないため、ヒナの胃にどんどん蓄積され、やがて衰弱して死ぬ。人間のサイズに換算したら10―12㌔のプラスチックを胃に溜め込んでいたという計算になった。このごみの半分近くが日本から流れてきたものだ。舞鶴市の若狭湾にある冠島で漂着ごみを調査した。漁師さんは、「韓国や中国のごみが多い」と言っていたが、調べると日本のごみが一番多かった。
市民参加が大事
リサイクルごみのほとんどを中国が引き受けてくれていたが、環境規制政策を打ち出し、今は輸入をストップしている。現在はマレーシアなどの東南アジアにリサイクルごみを輸出しているが、2018年、一番の輸出国は日本だった。
ペットボトルは、回収されているが、実はプラごみはほとんどリサイクルされていない。ほとんどは熱回収(57%)で、ごみを燃やして発電などをしている。これはリサイクルではない。
ドイツや韓国、オーストリア、ベルギーなどは半分以上をリサイクルしている。生ごみにいたっては焼却しているのは日本だけ。米・バーモント州では生ごみをごみ箱に捨てると罰せられる。発酵させて堆肥にしている。発酵過程で発生するメタンガスで発電し、堆肥は畑に戻している。
ごみ問題は市民参加で取り組むことが大事。私たちにできることは何か。社会の大きな話から個人レベルまでいろいろある。高校生だからこそできることがある。いろんな可能性がある。考えてほしい。