明治30年(1897)に開校した兵庫県立柏原尋常中学校を源流とする柏原高校の創立120周年を祝う記念式典が9月23日、柏原高校体育館で開かれた。在校生や来賓らが出席。歴史や伝統に思いをはせながら、これからも力強く歩みを重ねることを誓った。
同校の放送部員が式典の司会を担当。大西伸弘校長が「諸先輩が築かれた伝統を大切にし、未来に向かって前進していきたい。活力あふれる学びの場を創造します」と式辞。高井芳朗県教育長が「120周年を契機にこれまで築かれた伝統と教育実践にいっそう磨きをかけてほしい」とあいさつ。来賓祝辞に立った石川憲幸県議は在校生に向かって、「これからの伝統はみなさんがつくっていく。柏原高校ここにあり、と存在感を示していこう」と奮起を促した。
竹内牧人同窓会長は、「柏陵記念館」の改修など、120周年記念で取り組んだ事業を報告。生徒を代表して3年生の廣岡里菜さんが、120周年を祝うあいさつを述べた。
式典に続き、記念講演会があり、大阪大学大学院教授の柳田敏雄さんが「ゆらぎでひもとく脳とAI」と題して講演した。柳田さんは春日町出身で、柏原高校17回生(1965年卒)。脳型人工知能の開発などを研究しており、文化功労者に選ばれている。柳田さんは、脳とAIの違いなどについて説明し、「AIによって今後、社会が変わることを認識し、しっかり勉強をして自分の進むべき方向を考えてください」と、後輩たちに呼びかけた。
音楽教師、犬童球渓の史実上演
記念式典のあった日は、同校の文化発表会の1日目で、生徒たちは母校の歴史にかかわる催し物を披露した。旧制柏原中学校時代の明治38年に音楽科の教師として赴任した音楽家で詩人の犬童球渓を取り上げた演劇の上演もその一つで、3年生16人が演じた。
「音楽は女子がするもの」と反発した男子生徒たちは、音楽の授業を妨害。音楽を通して、日露戦争で荒れた生徒たちの心をやわらげたいと同校に招かれた犬童だったが、心身を病み、わずか8カ月で辞職した。その後、「更けゆく秋の夜」で始まる「旅愁」を作詞。柏原を去った後も、同校を思い続け、旧制柏原中の校歌を作曲した。
ギター部やコーラス部も出演し、映像も駆使して見ごたえある舞台を展開。犬童役を演じた3年生の待場啓汰君は「先人たちが頑張ってくださったおかげで今の柏原高校があることを、今回の出演を通して知り、感動した」と話していた。
文化発表会ではほかに、政治家の芦田均や有田喜一、俳人の細見綾子など柏原高校にゆかりのある卒業生を生徒たちが調べ、まとめたパネルの展示や、1966年から始まったアメリカのケント・メリディアン高校との交換留学を皮切りとする国際交流についての展示もあった。
(丹波新聞 10月8日記事より)